鹿江光

デビルズ・ノットの鹿江光のレビュー・感想・評価

デビルズ・ノット(2013年製作の映画)
3.5
≪70点≫:悪魔のために捧げる生贄。
実話ベースとは知らずに鑑賞。凄惨な猟奇的殺人事件に関する、冤罪裁判。被害者の遺族も街の人々も、どこか集団パニックのようにメディアの情報を鵜呑みにし、証拠不十分な青年3人が気付けば死刑と終身刑を求刑される。
本作のテーマは「誰の心に悪魔は宿るのか」ではない。「誰が悪魔に成るのか」が重要になってくる。そこには社会的レッテルや地位や、それぞれの保身による情報操作が渦巻いていて、人が人を裁くことに正当性はあるのか、という問いが真っ向から叩きつけられている。
結局のところ、メディアが流すメッセージは「事実」であって「真実」ではない。大衆が食い付くように情報は少しずつ動かされ、気付いた時には全く形の違うフィクションが出来上がっていることもある。そして大衆である我々も、サーカスの見世物を眺めるように、知らず知らずのうちに面白い展開を求めてしまう。「そうだったのか」という理解ではなく、「そうあるべきだ」という願望が先行し、真実は果てしなく遠ざかり、やがて形を変えた物語が記録として残る。
始めから悪魔などは存在しなかった。しかし、理解の及ばない出来事に、我々は悪魔を必要とし、場合によっては創ってしまう。そのことが恐ろしい。
鹿江光

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