しょーた

沈黙ーサイレンスーのしょーたのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.7
五島列島を訪れたので再度鑑賞。
思春期の時の自分に信仰とは
なにかを刻み込んだ映画。
いまでも「日本は沼だ」という宗教観と
その言葉が忘れられない。

今見返すと、宗教というものの
”教え”と”実践”の相剋が描かれているのかな?とも思う。
信仰といいつつ、本当に神の存在を信じきっているキリスト教信者の方は少ないのではないだろうか。教えを信じ実践し続ける努力のようなものが信仰で、それはどこかいまの欧米社会にある、人間の善を信じようとする信念のようなものと似ている気がする。それは根底に宗教があるからか、と忘れてしまっていた。無宗教以前に、日本人にはそれは理解し難く、どこか現実を見る目に冷めた諦念のようなものを感じる。死刑制度への考え方の違いもここからか。「転ぶ」。なんと意地が悪く性の悪い言い方か。

また、弱者の描かれ方だが、
(作品自体は誰にも味方していない)
経済的とか社会的とか飛び越えて、
人間としてこんなに弱い人物が描かれた物語はそうあるだろうか。
隠れキリシタンというテーマで棄教や踏み絵があるからこそ、こんなにも弱さというものに迫れる気がする。
そんな人物がキリストに似ているのも、キリスト教はもともとユダのような人物を愛すものだったと、はっとさせられる。

題名どうり、静かに本質を問うてくる傑作。五島列島では、本作で使われる波の音や虫の音が聞こえた他、あちこちで見かける教会が歴史を訴えてきた。
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