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沈黙ーサイレンスーのはまのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.2

まず遠藤周作の『沈黙』を知らない人があまりにも多くて驚愕……。中二病ってやつで一時的に読書に傾倒する時期を経験した人も多いと思うけど、太宰治読んで分かったような気になってるなら遠藤周作ぐらい読んどこうぜまじで(私は太宰治の大ファンです)。

それと!これだけは言いたいんだけど!!!この『沈黙』ってタイトルから想像して、主題を勘違いしてる人多いと思うけど、「神が沈黙してる」って意味じゃないんだよ……!!!(最初は「日向の匂い」のはずだったしね。)

それがちゃんと映画の中で描かれていたのにがっつりなかったことにしてる人ばかりで悲しくなった。ロドリゴしっかりと2回も神の声聞いてるじゃん……。神の沈黙という声に耳を傾けているんだよ……。

原作とこの映画自体はとても素晴らしかったんだけど、受け手である私たち現代日本人は教養としてもうちょっと宗教についての知識を身につけた方がいいのでは、と結構真剣に不安な気持ちになりました。


まあ個人的には宗教とその弾圧を通して、人が何かを信じるっていうのはどういうことなんだろうね?というもっと抽象的で根本的なことを考えさせられました。そのリードとしてキチジローという弱さ故に「棄教」を繰り返しながらも結局は信仰を棄てられないキャラクターが登場するわけで。


だから終盤でキチジローが首からかけてる袋に聖人のメダイを隠し持ってるのがバレるシーンについてもっと何か言う人がいてもいいのにと思う。なんなら遠藤周作とスコセッシの生い立ちとか調べてもらうと分かるけど、遠藤周作が描きたかったテーマはここに詰まっているし、だからこそスコセッシが一番描きたかったシーンなんだろうなと思う。あんな切ないのにロドリゴは一切の静の表情であるところがもう……。


あとは日本人が観ても一切違和感がないように撮ったスコセッシの仕事ぶりと、日本のキャスト陣だと窪塚洋介はもちろんイッセー緒方、塚本晋也の二人には本当に脱帽でした。
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