原作を読んで、これは観るのはかなり精神的なエネルギーが必要だなと思って録画してからしばらく置いてから観た。
大変な時代で、登場人物誰も幸せそうじゃないし、拷問は可哀想だし、みんな受け入れあって仲良くすればいいのにと単純に思わせない作りが凄い。
そもそも鎖国している日本に密入国してまで布教することが侵略に等しい行為であり平和を乱す異質なものとして見えるようにも描かれている。自分がこの時代の統治者なら、村人が見たこともない外国人が広める異宗教を拠り所に天草一揆のような反乱を起こしかねないと思い、乗っ取られる前に排斥するんじゃないか。
一方でキチジローは弱く狡く情けないが、自分のような人間はどうすればいいんだと何度もパードレに問い掛け、一番救いを必要としているように見える。
キチジローをうとましく思ったり祈る前に食べ物にがっついたり常に心に迷いが生じるパードレの生々しい人間らしさも随所に感じる。
いろんな立場で考えると見え方が違ってくる。見ている間も見終わってからも考えさせられる。
神はいるのか、という物語を通してある問いに対する答えの解釈は監督なりなのかな。原作では答えは出ていなかったように思ったけど。
景色が美しく、本当は日本で撮って欲しかったけど。トカゲはせめて日本トカゲにして欲しかった。
最後、パードレが棄教してからキチジローに赦しを与えるのは何か意味があったのかな。人を救う事に信仰は関係ないというメッセージ?
しばらくしたらまた観て、もう少し考えてみたい。