あくまで映画として評するなら、本当に素晴らしい一作。
印象的なのはいくつかの霧が立ち込めるシーン。
疑念や恐れの感情を視覚的に観客に作用させる手腕は見事と言うほかない。
また信仰を試される数々の拷問・磔刑のシーン。
個人の信じるものを他者に制限される、奪われることの残酷さ、悲痛さを余すことなく映像に落とし込んでおり見ていて本当に心が苦しくなる。
アダム・ドライバーと浅野忠信が本当に良かった。
ただやはりキリスト教の描写においては考えさせられる所が多い。
物質的な崇拝が個人の信仰の拠り所となっている描写はカトリック的であり「心は神のみぞ知る」と言いながらも最後のシーンでは革新的なアイテムがクローズアップされる。
本作のテーマはあくまで「宗教」でありまた「心は誰にも侵されない」ことが本旨ならば上述のシーンは一つの宗派に偏った描写となりはしないのか。