そうねだいたいね

ソング・トゥ・ソングのそうねだいたいねのレビュー・感想・評価

ソング・トゥ・ソング(2017年製作の映画)
4.5
劇場で観なかったことを悔やむ。相変わらず豪華なホームビデオ。撮り方からしてカメラの存在を感じざるを得ないが、登場人物たちはカメラが存在しない世界で好き勝手に恋愛をする。一体このカメラは誰目線なのか?カメラは人物を追ったり突き放したり。時には人物の目線となり、相手はカメラ目線で話をかけてくる。他人の恋愛を覗き見する様な感覚が、有名俳優の知名度と芝居で掻き消されているような印象を受けた。その結果、作品(観念)と役者(エモーション)が物の見事にクロスしてドラマとドキュメントの狭間みたいで力を感じる。テレンス・マリックの前作と比較すると相変わらず説明は無いが、物語が追いやすくなっていて観やすかった。個人的に登場人物が端役を含め、物語を展開させる道具ではなく、個々で生きていると思わせてくれる説得力があった。これは演出のお陰か役者のお陰か。どっちもか。台詞の音声と口の動きをずらすことで真実を告げていない様に見えて(実際の意図は分からない)役者という肉体を介さず、心が単独で映像に存在しているかのような表現に感じたり。登場人物同士にとっては成立していない対話が、観客にとっては成立していることで構成は観客ガン無視だが、テレンス・マリックがこちらを意識してくれているという安心感があった。