MasaichiYaguchi

パパが遺した物語のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

パパが遺した物語(2015年製作の映画)
3.9
「幸せのちから」で父と息子の固い絆を描いたガブリエレ・ムッチーノ監督は本作では父と娘との愛を描く。
有名な小説家ジェイク・デイヴィスを父に持つケイティ・デイヴィスが、ある事故で母を失い、残った父と送った少女時代の日々を25年後の現在から振り返る形で物語が展開する。
大学院で心理学を研究し、家庭に問題のある子供たちの精神的ケアをするソーシャルワーカーをしているケイティではあるが、彼女自身が心に深いトラウマを抱えている。
彼女のトラウマは、人を愛することが出来ないということ。
トラウマの起因となった事故で彼女の家族の歯車が狂い、身内の思惑によるいざこざまで起こって事態は悪い方向へ傾いていく。
ケイティを愛し、このようなことから守ろうと必死になるジェイクは、新しい小説を書くことによって起死回生を図ろうとするのだが…
現在の展開の中で、ジェイク・デイヴィスを作家として尊敬し、その著作を愛読する青年キャメロンが登場するが、この青年との出会いで彼女の心に変化が訪れる。
父の面影を彷彿させるキャメロンは、彼女にとって父を思い出させてくれるキーマンなのだと思う。
そして彼との触れ合いの中で喚起される父の純粋で深い愛に包まれ、彼女は愛することの素晴らしさに目覚めていく。
初め原題“FATHERS & DAUGHERS”を見た時、何故「複数形」なのかと疑問に思った。
本作はジェイク・デイビスとケイティ・デイヴィスという一組の父と娘の物語だが、ここで描かれた愛は洋の東西を問わず普遍的で、娘を愛する父親たちへ、そして自分を無償の愛で包んでくれた父を持つ娘たちに捧げられた物語だからなのだと思う。