かたゆき

チャイルド44 森に消えた子供たちのかたゆきのレビュー・感想・評価

2.5
楽園に殺人など存在しない――。
1953年、スターリン独裁体制下のソビエト、モスクワ。
秘密警察のエリートであるレオ・デミドフは日夜、西側諸国との激しい諜報活動に忙殺されていた。
密告、拷問、粛清と共産体制を維持するための嵐が猛威を振るうなか、レオはある〝事故〟の報告を受ける。
親友でもある同僚の9歳になったばかりの息子が列車に轢かれ死体となって発見されたというのだ。
検死結果は明らかに殺人。
だが、「人類の楽園であるソビエト連邦に資本主義の病理である猟奇殺人など存在しない」という上層部の意向により、事件は事故として処理されるのだった。
そんななか、レオの妻にスパイ容疑がかけられる。直後に始まった激しい派閥抗争に敗れた彼は、とある地方都市へと異動させられるのだった。
ところがそこでも子供の変死が相次いでいることを知った彼は、同じく左遷させられた上司と共に独自に捜査を開始する。
すると同僚の〝事故死〟した子供を含め、44人もの子供たちが広範囲で同じ状態で死体となって発見されていることが判明するのだった。
果たして、楽園であるはずのソビエト連邦に連続猟奇殺人事件など存在するのか?
東西冷戦の真っ只中、そんな不気味な事件に関わることになった一人の将校の姿を通してソビエト連邦の非人間性を炙り出すサスペンス・スリラー。

ベストセラーとなったミステリー小説を原作に、トム・ハーディとゲイリー・オールドマンが主演を務めたということで今回鑑賞。
あんまりよく知らないのですが、きっと原作は物凄く重厚な作品なんでしょうね。
そういう長大な小説を原作にした映画の、悪い部分ばかりが目立つ作品だと僕には思えました。
一言で表すなら、まさに散漫。
たとえば物語の冒頭、主人公が孤児であることや、ナチスドイツ陥落間際のベルリンで武勲を挙げたことなどが示されるのですが、それが物語の中で重要な伏線となるのかと言うと最後まで特に意味など持ってきません。
このように無駄なエピソードがたくさんあって途中から物凄く冗長に感じられるのです。

さらには物語の重要な核となるものも、
①子供ばかりを狙った連続殺人鬼を巡るミステリー。
②共産主義体制下、激しい権力闘争に巻き込まれた一人の男の悲劇。
③愛憎相半ばする夫婦の物語。
と、どれに焦点を絞って観ればいいのかさっぱり分かりません。
長い小説を2時間強の限られた映画に纏めるならば、削るべき部分はきっぱりと削り見せるべき部分をしっかりと描く、監督は勇気を持ってそんな取捨択一をするべきでした。

全編を覆う、当時のソビエト連邦を象徴するかのような閉塞感に満ちた雰囲気はとても良かっただけに残念と言うほかありません。
かたゆき

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