かわたん

その夜の妻のかわたんのレビュー・感想・評価

その夜の妻(1930年製作の映画)
4.0
この作品も、人物の動作から手元をクローズアップで写すカットアウェイがたびたび登場する。その繋ぎ方はかなり滑らかだと思う。また、本作では小津にしては珍しい、クロスカッティングも見られる(逃亡する男と、妻と娘)。さらに、ズームが多用されてるのは小津作品として見たとき意外だった(ズームは不安定に見えるから)。夜から朝への時間経過は、あるシークエンスを写し、点いていた室内灯が消え、外の様子が写されて、再び最初に映したシークエンスを逆行する形(完全に一致するわけではないが)で見せることで表現されていた。2丁拳銃を構える和服の妻は確かに印象的だけど、それほど強烈にも感じなかったな。その点、個人的には『その夜の妻』って題名にして妻に注目させたのは正味しっくり来ない。
ストーリーに関して言えば、『朗らかに歩め』に引き続き、罪を犯した物が最終的に償おうとする展開は類似を感じるが、本作の方は最初から主人公に贖罪の意志があるため、そこはそれほど問題になってない。むしろ、彼を捕まえに来た男の心情の変化に焦点が当たっているように感じられる。
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