らいち

オオカミは嘘をつくのらいちのレビュー・感想・評価

オオカミは嘘をつく(2013年製作の映画)
2.0
そんなに彼のファンではないのだけれど、タランティーノが選ぶ2013年のベスト映画10作品に選ばれていた映画、ということで観に行った。
いやはや、つまらない。。。。それよりも嫌いな映画と言ったほうが適当かも。

女子の惨殺事件を軸に、犯人の疑いをかけられた容疑者と、その被害者家族、その事件を追う刑事の3者を追った物語だ。
邦題の「オオカミは嘘をつく」が完全にネタばれ。
登場人物が3者にほぼ限られているため、「誰が犯人なのか」その回答予想が容易である。「ミステリーではなく、サスペンススリラーとして観れば良いのか」と思うが、その描き方がミステリーっぽくて不可解。

オープニングに引き込まれる。
美しい紅葉のなか、男女の 子どもたちが田舎の空き地で無邪気にかくれんぼしている。その映像だけ観ていると愛らしい光景なのだが、スローモーションと音楽を巧く活用し、不穏で不気味な空気を充満させる。その後、隠れていた女子の1人が綺麗な赤い靴を1つ残して、忽然と姿を消すのだ。
胸騒ぎがするオープニングに、これは「傑作の予感!」と期待に胸を膨らませるが、みるみるうちにしぼんでいった。退屈さと相まって何度も眠気が襲う。。。

キャラクターの個性を裏付ける行動パターンがルーティンで変わることがなかった。また、中盤から加勢する爺さん含め、すべての展開が、結局、予想の延長線上にしかなかったのが辛い。

本作のテーマとして、「プリズナーズ」みないな「罪と復讐の境界線」みたいなものを感じるが、本作にはその境界線を越えることへの葛藤が皆無で、「疑わしきは罰を」の一点張りである。何とも共感しづらい。復讐に狂った被害者家族が際限なく、容疑者に拷問を与え続ける。エスカレートする拷問ショーは実に味気ないもので、「良い人」であり続ける容疑者を前に、冗長さと嫌悪感だけが募る一方だ。途中、劇場から退席する女性もいて「やっぱりそうなるよなー」と思ったりする。

展開の底が見え、嫌な予感を感じつつも、どんな結末になるのか多少期待して追っていくが、「どうだ!」とイキったようなラストカットに軽い憤りすら感じた。「散々見させておいて、それかよ!」とツッコむ。

イスラエル映画だ。狂った被害者家族の姿から、テロに慄くイスラエル人たちの社会的背景が読み取れる、みたいなレビューを見たが、その解釈は寛容過ぎであり、無理があるというもの。単純に面白くない、それで良いと思う。

タランティーノが、このバイオレンス描写だけで称賛しているということであれば、かなりセンスが悪いと思った。

【40点】
らいち

らいち