KY

自由が丘でのKYのレビュー・感想・評価

自由が丘で(2014年製作の映画)
3.6
ホン・サンス監督作。

年上の韓国人女性クォンに好意を抱くモリは彼女を追ってソウルを訪れるが彼女はどこにもおらず、日記に似た彼女への手紙を書くことに…。

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特筆すべきは主人公が日本人で舞台が韓国でありながら会話は英語で行われているという点。両者が第二言語で会話を積み上げていくので語彙力の問題もあり、人間関係が精密には構築されていかない。

登場人物が時々感情を表現するんだけどそれがシンプルな語彙すぎて真意が上手く伝わってないし、シンプルな語彙を使うゆえにそのキャラクターまでもシンプルな直情的な思考をする様になっている。

例えば日本人同士ならそんなに『好き』を連呼しないし『変人』という言葉も相手に投げない。

もちろんその良い面もあって薄いゆえに他人としてのコミュニケーションのしやすさも描いていた。現実においても日本人よりカタコト日本語の外国人の方が話す際、仲良くなりやすい事もある。

恐らくは監督が海外生活の中で第一言語が英語ではない同士のコミュニケーションを多く経験してゆえの着想だろうか。

そういった表現は直情的で見やすいので、手紙を落とす事で時系列がバラバラになった手紙の様に展開していく今回の作風とも相性は良かった。よりそのシーンの感情ポイントと時間の地点がはっきり見える。

大きな展開もなく薄味の会話が繰り広げられる面白くない映画といえばそれまでだが、ブロークンイングリッシュを使う人口は英語を使う人口より圧倒的に多いだけに今後無視できない表現と思う。
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