エリーン

野火のエリーンのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
4.9
塚本晋也監督がスポンサーがつかないために完全自主制作した1作。プライベートライアン的な記録映画を模したトーンの暗めな戦争映画とは一線を画し、美しい緑が眩しく照りつける、まさに、今、起きていることのように感じれる色彩構成になっている。
敵もいなければ秩序もなく、右往左往してふらふらゆらゆらと歩く様は、まるで地獄だ。
行き先や目的や大義や頼れる上官や組織や敵味方ももはや無く、人が死ぬのに意義は無く、人が人の形を失い、尊厳を失ってドロドロになってゆく。ああひどい。とにかく地獄としか言いようがない。アメリカの戦争映画を何回も見てきたが、秩序立った最終的には守られるべき組織のある戦いがいかに文明的なことか(戦争が悲惨であるという事実には変わりないが)。
兵士たちをこんな風にした日本軍の罪は重い。
塚本晋也監督が主演も務めるが、なかなか話し声もたたずまいも素晴らしい。よくこの映画を作ってくれたと思う。
ゆきゆきて神軍の現実をまざまざと見せつけられる。これからも、夏にはずっと上映し続けて欲しい。
エリーン

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