はなふさよめこ

野火のはなふさよめこのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
4.0
20年以上前からの塚本監督のファンとして、豊岡劇場で鑑賞できたことが本当に嬉しい。
上映後のトークショーの話も興味深く心臓バクバク。
大岡昇平「野火」の原作に対して誠実であるにも関わらず、塚本作品としての純度も非常に高い素晴らしい作品だった。

所謂「残虐シーン」より恐れ怯える主人公のさまの方がよっぽど観ていて恐ろしく、映画の始まり方にまず痺れたし(さすが!カッコイイ!と心の中で喝采)、上映後のトークショーでその理由を聞いてまた胸アツ。安易な解釈に逃げることを許さないラストも素晴らしい。

(予算の関係かもしれないが)登場人物が絞り込まれ、密林の中でのあてのなさが醸し出す奇妙な閉塞感が面白かった。
主人公が肺病で、始終息を詰まらせていたのがその閉塞感を増幅させていたし、ある種密室劇にもなっていたと思う。
主人公の息苦しさ、私も20歳過ぎまで喘息だったのであの息が上がる感じは身体の奥の方に記憶がある。その記憶が揺さぶられたのか途中、本当に息苦しくなりかけた。

私は『ヴィタール』以降の塚本作品の変化(進化)に大賛成で、今回『野火』でもその系譜はしっかり感じさせてくれながらも『鉄男』時代のフレッシュさも感じられた事に本当に驚いてる。前日に『ヴィタール』観直しといて正解だった!2冊のパンフを読み込んでまた観てみようと思う。
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