主人公に共感はできないし、ほっこりするわけでも、号泣するわけでも無いが、退屈せず後味も良い不思議な映画。
注目すべきはやはり主演のジェイク・ギレンホールなのだが、好演というべきか、怪演というべきか、はたまた妙演というべきか……。とにかく存在感がものすごい。
妻を亡くしたが負の感情が現れず、身の回りのものを分解するようになる男、という変わった役どころ。これが妻の死によって精神に異常をきたした、という役なら誰でもできる。しかし妻の死がきっかけではあっても、気が狂ったわけではない。頭がおかしくなったわけでもない。そんな、少しの大袈裟な好奇心、程度の精神の変化を起こした男を見事に演じている。
まさに目を離せない。そんな月並みな表現でしか表せないような素晴らしくかつ不思議な演技。
ストーリーの方も大きなオチがあるわけでもないが、後味はとてもよい。コメディ要素は皆無なのに、思わず笑ってしまうシーンもあれば、さらにずっしりと心にも残る場面もある。
本当に奇妙な作品だが、普通の映画を見飽きた人には是非ともおすすめしたい一作。