このレビューはネタバレを含みます
妻を亡くした男の話。
男のなかにある妻の記憶の描写が完璧すぎる。
メリーゴーランドで手を心臓のところにもってきた事とか、足の裏を揉んで近づいてきた所とか、嬉しそうに新しいマットをみせる姿とか、空港でおかしな歓迎をしてくれた事とか、凄く嬉しかった訳でもないなんでもなかったような事ばかりが、浮かんでは消えていく。そんな記憶はしばしば顔がぼやけてたり、背景も思い出せなかったりする。ただ、生活をすればするほど、その断片はどこにでも散りばめられているのに、匂いくらいあやふやで、すぐに消えてしまうような姿をしている。
"妻を愛していたのかは、分からない。結婚したのは、楽だったから。"
"愛してはいました。ただ、おろそかにしていた。"