かたゆき

クリムゾン・ピークのかたゆきのレビュー・感想・評価

クリムゾン・ピーク(2015年製作の映画)
3.5
いつかその時が来たら、“クリムゾン・ピーク(深紅の丘)”に気をつけなさい――。
19世紀末、アメリカ。幼いころに母親を失くし、以来裕福な父親の元で大切に育てられた少女イーディス。
幼いころから何不自由なく暮らしてきた彼女は、ちょっぴり世間知らずで夢見がちな女の子だ。
年頃の美しき女性へと成長したある日、彼女はイギリスからやってきたトーマスという名の準男爵と出会う。
どこか胡散臭い彼に父は警戒心をあらわにするが、何処か影のあるトーマスにイーディスは次第に心惹かれていくのだった。
そんな折、父が浴場で謎の死を遂げる。
天涯孤独となってしまったイーディスは、トーマスと結婚し彼の故郷であるイギリスへと移り住むことを決意する。
子供のころから姉と二人きりで過ごしてきたという彼の館は、寂れた郊外にひっそりと佇み、年代物の家具調度品や古びた芸術品で溢れ返る大豪邸だった。
だが、イーディスはまだ知らない。
そこが、冬になると真っ赤な赤土が染み出し、降り積もった雪を真紅に染めてしまう禍々しい地であることを……。
古びた洋館を舞台に、そんなうら若き女性が迷い込むことになる淫靡で怪しげな世界を妖艶に描いたゴシック・ホラー。

僕のこよなく愛するダーク・ファンタジーの傑作『パンズ・ラビリンス』を生み出した鬼才ギレルモ・デル・トロ監督の最新作にして、『パンズ~』の系譜を色濃く受け継いだ本作をもうワクワクしながら鑑賞してみました。
いやー、いいですね~、いかにも彼らしいこのおどろおどろしい世界観。
蟻が蝶の死骸を食い漁る様をアップで映し出したり、廊下の暗がりから骸骨のような幽霊が迫ってきたり…。
ミア・ワシコウスカが身に纏う衣装の美しさも相俟って、そんなモダンで壮麗な世界に僕はもうどっぷりと浸かりきってしまいました。
圧巻はやはり、彼女が移り住むことになるシャープ家のその細部まで造り込まれた美術でしょう。
何かが潜んでいそうな暗い影がいたる所に存在し、廊下には何処に連れていかれるのか分からない古びたエレベーター、天井に穿たれた大きな穴からは常に埃が雪のように舞い落ちる…。
もう見事としかいいようがない。

ただ、そのように世界観は確かに素晴らしかったのですが、肝心のストーリーの方がちょっと弱かったのが残念。
物語の随所に繰り返される母親の警告がいまいち効果的に使われていないし、幽霊の扱い方もなんとも中途半端。
うーん、惜しい!
とはいえ、クライマックスでの真紅の血や土がそこかしこに迸る血みどろ展開はまさにデルトロらしい残酷な美しさに満ち満ちていて(頬にナイフとかもう痛々しいったらありゃしない!笑)、そこらへんは大変満足でございました。
かたゆき

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