このレビューはネタバレを含みます
面白いか面白くないかで言えば、面白い。全編ワンカットで、ずっと車のなか。顔が出る人物は主人公アイヴァンだけという、ソリッドシチュエーションドラマ。真面目で正直な主人公アイヴァンは、ヨーロッパ最大規模のコンクリート基礎建設作業の前夜に、一度の行為で子供ができてしまったベッサンのもとへ向かう。車の中でその事実を妻であるカトリーナに伝える。１人の男の人生が、よじれて、崩れていく。
普通であれば、面倒くさいベッサンを捨てて、仕事をし、家族にも黙って過ごすのだろう。でもアイヴァンは、自分は責任がある、あくまで俺の子供だと貫き、その信念のせいで、仕事を失い、妻からは二度と帰ってくるなと家も失うことになる。呆れるほど愚直なアイヴァンが可哀そうになる。１人の男に巻き起こる人間ドラマ。アイヴァンは本当に優しくてまじめな人だろうけど、非常に頑固。そういう人物像が、電話での会話を通じてよくわかる。ソリッドシチュエーションというのに、なかなか惹きこまれる物語だった。主人公の演技力だろうか。物語の最後は、ベッサンのもとへ向かう高速道路を下りた瞬間にベッサンから電話があり、赤ん坊の泣き声がして、そこでおしまい。ドナルに任せた仕事は成功するのか、カトリーナとは本当に離婚してしまうのか、ベッサンとその子供はどうなるのか、どう考えても後日談が気になりすぎる終わり方。続き気になる映画は良い映画だと言うが、個人的にはあまりにもそこを狙いすぎてやしないかと思った。散々種を撒いといてずるいってかんじだ。面白いけど、別にもう一回は見ないかな。
