So

ロスト・エモーションのSoのレビュー・感想・評価

ロスト・エモーション(2015年製作の映画)
3.0
感情ってのは確かに害悪なのかもしれない。規律ある社会行動の中では個の乱れが最も許されないわけで、軍隊だろうと会社だろうと学校だろうと、組織では少なからず感情を排した行動が求められている。
それを極限まで法規化した近未来を描いたこの作品。

感情を排しきれず、どこかで感情を発芽させた者は治り難い病気とみなされ施設に入れられて自殺を促されるという狂気の世界。
感情に支配されることは人間として堕落することなのか。
人間はそもそも感情を無くし切ることなどできるのか。
感情を諸悪の根源とし、それでも感情のもたらす充足感が「愛」だと気づく主人公。時に渦潮のようにある一点に向かって深い意識で交わることのできる人間。それこそが人間がなぜ生きるのかの答えだと映画を通して語られる。

世界観は非常にアカデミックでその中で男女が求め合うラブストーリーもピュアで見心地はいいけど、時代なり施設なり社会システムの設定がイマイチ弱く現実感が薄い。また、全体を通してサスペンス要素が足りないから緊迫感に欠ける。彼らが何と対抗しているのか、何と戦おうとしているのか、対象が「感情を抜き去る社会」からもう一歩先にある存在を示して欲しかった。
感情を失うことの無味乾燥な世界と感情を持つことでの乱れ温かく充足する世界の対比がもっと出るとよかった。
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