気づきの多い作品。
争いを無くすため『差異』の排除を徹底的に目指した世界。人々は過去の記憶を持たず、毎朝の投薬で自分の感情を抑制される。
そもそもこの世界には『感情』という言葉が存在しない。争いを無くすため、差異が生まれるようなものは排除されてしまったのだ。
差異を無くすために排除されたものは、色、音楽、記憶、感情、痛み、そして愛。
主人公は、師匠とのやりとりを通じてこれらの排除された言葉を獲得して、それらから湧き上がる自分自身の感情に意識的になっていく。
そして初めて『生きる』とは何かを理解し、体感していく。
この作品の前提にある考えは、『違う』ことは『生きる』ことであり『争う』ことでもあるということだ。そして『生きる』ためには『違う』必要がある。つまり、『生きる』ためには『争う』必要があるということだ。
果たしてそうなのか。
『違う』ことを互いが認めれば『争う』ことは避けられるのではないか。
そんな気づきと問いが生まれる作品。
きっと、これからも観るたびに新たな気づきが得られるだろう。だから、また観たいと思う映画だ。