ゆうじ

ドローン・オブ・ウォーのゆうじのレビュー・感想・評価

ドローン・オブ・ウォー(2014年製作の映画)
3.4
試写会にて

米軍のドローン運用については以前から興味があったので、本作は予告を見た時から楽しみにしていた。

核やナパーム弾など戦場で使われる兵器は今までも多く国際問題になってきたが、ドローンもその一つ。

この映画でその問題点が具体的に見えた気がした。
大きく分けて二つ
第一に戦闘関係があまりにも不平等になること。
ドローンはなんら危険を冒すことなく相手を攻撃できる。これにより戦闘行為のパワーバランスを崩壊させてしまっている。

第二にその圧倒的な力に伴う責任を人間が持ち続けられないということ。
自らを相手と同じ危険に晒したからこそ、己の中で正当化されうる戦争における殺傷行為はドローンのパイロットには当てはまらない。
簡単に人を殺せてしまうことへの疑問を常に持ち続けての任務を行うことは、実際に戦地で戦う兵士とは異なる原因による心の病を招く。

悪い面ばかり指摘されるのは新技術の定めかもしれないが、作中のCIAの言葉の様にドローンによって救われる命もあるはず。
しかし、今も昔も使われる兵器がどう変わろうと、戦争は罪のない人が巻き込まれ、人々が残酷に殺しあうもの。

戦争の悲惨な普遍の姿を有耶無耶にせず、突き付けているのがこの無人機遠隔操縦爆撃というシステムであり、この映画なのだと思った。

トークショーでの拓殖大学の森本教授も仰っていたが、こうした大きな力は使う者の意思によっては敵になることが最も恐ろしい。
剣にはじまり銃、ミサイル、核と激しく進化を続ける兵器はそれを持った瞬間から常に自分にも向けられている事を思いださせられる。

映画としては自宅とコンテナの往復でほとんどのシーンが構成されているため多少単調ではあったが、主人公の日常的な苦悩を表すのには効果的だった。
モニターの中の中東の人々目線のシーンなどあったらより悲惨な戦争の姿が伝わったのかなとも思ったが、多分あえて意図的にそうしたシーンは外したのか。
いずれにせよこの兵器の恐ろしさ戦争の理不尽さは十分に伝わった。
ゆうじ

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