タナカリオ

わたしに会うまでの1600キロのタナカリオのレビュー・感想・評価

3.6
荷物をパッキングする音、靴と地面が擦れる音と、遠くに聞こえる風の音、夜に鳴く虫の声、一期一会で出会う人。旅好きにはたまらない”好き”が溢れる映画だ。

しかしこれは観光の意味を伴う旅ではない。
主人公のシェリルが行くのは、メキシコ国境からカナダまでも続くパシフィック・クレスト・トレイルという世界で見てもとても長い自然歩道。

そこで母親の死をきっかけに自暴自棄になり自分と母親の死から向き合うことを逃げていたシェリルは、この長い旅をしながら、自分自身へ向き合っていく。
長い長い、シェリルの始まりへの旅なのだ。

美しい景色が頻繁に出てくるわけではないが、少しずつ自分と向き合っていくシェリルの心の動きと伴ってたまに映される美しい景色は、観ているものを不思議と飽きさせない。

邦題は随分単純になりタイトルの意味を考えさせる楽しみを奪ってしまっているが、ぜひ原題の”Wild”という言葉をの意味を考えながら観て欲しい作品である。
タナカリオ

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