MaiSetsuna

予告犯のMaiSetsunaのネタバレレビュー・内容・結末

予告犯(2015年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

凄く心を動かす映画だなと思う。

設定が他人事とは思えなかったからだと思う。

観る前のイメージは「デスノート」の様な「ダークヒーローが法で裁けない犯罪者に鉄槌を下す」
単純にそんな話だと思っていた。

でも過去回想で生田 斗真演じる主人公がSE?(プログラマー?)として働くシーンが実にリアルで他人事とは思えなかったんだと思う。


ただ頑張るだけじゃ報われない低賃金で長時間の労働。
社員や部下を人間とも思っていない経営者。
ドブラック企業としか言えない最悪な労働環境...。

SEとしてではなかったにせよ、私はそんな世界を嫌と言うほど知っている。
過去の経験、映像が蘇る程のリアリティ。

何とも言えない嫌なモヤモヤ...そんな世界。

滝藤賢一演じる、人を人とも思ってない最悪な社長が「演技めちゃくちゃ上手いんだよ...」
映画を見ているだけじゃ「うわぁ、最悪!こんな人関わりたくねぇ!」って思うけど、世間的には、こういう人かなりの数居るんだよ...マジで(実際に見てきたからリアルなのが感覚として分かる)


映画ではあるけれど、この主人公は会社の中で辛い思いをしてきたんだろうなと言うのが短時間の映像で容易に読み取れる。他人事とは思えないのはそんなだからだろう。


リアルだと感じる点は他にもある、対人関係によるストレスで病気をし、長期で働けなくなるくらい追い込まれても、その会社にとっては大したことではなく、名前すらも覚えられていないという事。
おそらくは私の昔勤めていた会社でも名前なんか憶えられていないだろう...それが労働者と言うものなのだ。


真面目な人間ほど、そんな地獄の環境から抜け出す事は難しく...倒れたり、救急車で運ばれるまで自分が限界なのだと気が付かないのである。

俯瞰してみても、自分の事以外の限界を迎えて仕事で鬱になった人をたくさん見てきたから凄く分かる。
落ちてしまった人が、どんどんと転げ落ちてどうにもならなくなっていくのも凄くリアルで、それこそが現社会問題の一つと言ってもよいのではないだろうか?とも思っている。


SNSのフォロワー増やし、バズらせ目的やアクセス稼ぎ、チャンネル登録者数増やしの迷惑動画配信者は五万といる中でゴキブリをキッチンで調理するサイコな奴も普通に実在する。
勿論、レイプや暴力事件に巻き込まれた被害者に対し、本人にも責任がある等と他人事として語る奴も実在する。
何か問題が表に出た時に、それを政治利用する政治家や官僚だって普通に居る。

この作品に登場する要素一つ一つが、実在してもおかしくない程のリアリティだから、ストーリーに入りやすいのではないかと思う。


「そうか。死んだか?欠員は明日補充する」と言ってスコップを投げつける雇い主。
「これ使え!」のシーンが頭から離れない。
でも、こんなサイコキャラですらリアルに思えてならない。
いわゆる「社会の闇」というやつだろうか...。
MaiSetsuna

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