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キャロルのmotoko322のレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
4.0
自由なはずの2人の女性の物語。

1950年代のニューヨークでキャロルと出会ったテレーズ。
おもちゃ売り場で遠目に見たキャロルに一瞬で惹かれるテレーズの気持ちに先に気づくのは、本人ではなく観客、もしくはキャロル自身。

2人の初めての会話も印象的。相手の幼い頃の話を引き出していて、恋の始まりとしても素敵だし、キャロルの娘への愛情もここからすでにたっぷり感じられる。

私はこの物語は、2人の女性の恋愛関係を中心に見せながら、実は、自由に対して私たちがどう対処できるのかということを問いかけているのかも?と思います。誰を愛するのか、働くのか、働くなら何を仕事にするのか…。現代でも、みんなそれに対して自由だよって言うけれど、実際はどうかしら、という問いかけもあるような。。

テレーズは、自分でも言っている通り、何がしたいのかわからない、したくないのかも、してみないとわからない。彼氏との関係も、愛されるままにしているだけ。
対してキャロルは、自分のやりたくないこと、自分が自分らしくいられるために必要なものを怖いくらい自覚している。

そしてテレーズは、写真を仕事にしたいということに、キャロルとの関係の進展と並行して気づいていく。
キャロルは、支配的な夫からの自由と娘への愛の間で引き裂かれている。彼女自身は自由だけれど、愛は時としてそれを妨げる…。

しかし2人の愛の逃避行?中ですら、テレーズは自分のキャロルへの気持ちをはっきりさせられない。
キャロルはそんなこと全くなくて自分の気持ちは全て把握しているんだけど、それでも夫からは逃れきれていないことを知り、彼女の自由の砦の脆さが露呈される。

テレーズの彼氏、キャロルの夫が、タイプは違うけれどわりとわかりやすく男性的なキャラクター。もちろん、男性的=女性を抑圧する、というわけでは必ずしもないけれど、この映画では、女性が自由に社会進出できるようになってきた世の中で、2人の女性がいちばん親密な男性に何かを抑えられている様子がわかりやすく描かれている。


だから、テレーズが自らキャロルを選び取りに行くエンディングは、彼女がそれをそこまで欲しいと自覚できたことを見せてくれて、喜ばしいもの。
最後のケイト様の微笑がたまりません!!!


しかしながら、私がいちばんいいなと思った関係性は、キャロルとアビーです。理想的な元カレ元カノ関係!
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