チクワちゃん

キャロルのチクワちゃんのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
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舞台は1950年代のニューヨーク。
この時代の働く女性の憧れの職業といえば、有名デパートの売り子だったと聞く。なぜならそこにはお金持ちの紳士な男性がたくさん訪れるから。主人公テレーズも、優雅な奥さん候補になりたいのかな?と一瞬思ったが、そんなことはない。彼女には職業として写真を撮るという筋の通った目標があり、一応彼氏もいる。そんな彼女のもとへ、まさに優雅な奥さん街道まっしぐら風の女性こと、キャロルがやってくる。

ぱっと見で、テレーズとキャロルは正反対の暮らしをしていると察することができる。洋服も違えば、お互いの家のエリアも遠いし、年齢も離れている。なにせキャロルは子持ちだ。普通、生活環境が違いすぎると仲睦まじくなるのは難しい。(特に女性は人生に選択肢が多い分、多々うわべだけの会話で済ませざるを得ないことがあるのだ。)それを「手袋」をきっかけにして、赤の他人の女二人が、音楽や旅で交流を深めていけるというのはなんとも素敵なことである。

みんなが幸せになって欲しい、そして好きな人が一番幸せでいられる道を自ら望めることが、どんなに幸せに満ちあふれていることかと熱弁したキャロルに痺れた。(まずキャロルの人間性がとてつもなく素晴らしいのです!)人を好きになることは、性別を超えて人間と人間の間の出来事であるということになんだか自覚しづらいこの時代にメスを入れ、上品に優雅に、愛することにはまず、前のめりの愛する気持ちがあることを証明したとてもあたたかい作品であった。