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キャロルのtomoのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
3.6
若い女性が危険な魅力を放つキャロルに惹かれる過程がメインの筋と予想しながら見ていたが、ナチュラルな同性愛者であるキャロルが「普通の主婦」の役割を求められることの苦しさ、過酷さの方が印象に残る、予想より重い映画だった。2人の美しさと恋愛模様も満喫できる作りではあるが、より強く心に残るのは、彼女たちがそれぞれに抱える仕事・家族・恋人・生活・夢といった様々な悩みやしがらみと、互いとの出会いがそれぞれの生き方にどう影響していくかだった。
ちょっと昔の恋愛映画(特に「道ならぬ恋」系)だったら、他のものを丸ごと犠牲にするような激しい情熱を描くのが鉄板だったろうが、本作は2人とも相手に強く惹かれながらも、どちらかというとそれは安心できる相手、より自然な自分でいられる居場所といった感情のようで、2人が自分たちの関係性に対して(少なくとも一旦)下した決断は、恋情に流されたものではなく、共に自立した女性である(または作中でそうなった)ことを感じさせる。少し前の時代が舞台だが、女性の描き方、視点が非常に現代的。
しかしそれでもやはりラストシーンは2人の表情の絶妙な動きと相まって胸が締めつけられるような気持ちになるし、あの後どうなるとしても2人の幸せを願わずにいられない。
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