キヲシ

キャロルのキヲシのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
3.8
仰向けになり待つテレーズに「美しい」と囁くキャロル…。ルーニーマーラとケイトブランシェットの逃避行のようなドライブ旅行、ついに訪れたこの場面にため息が出る。冒頭の街中を彷徨うカメラに導かれ二人に出会い、雨の水滴が光る車窓越しにテレーズの横顔。デパートで交わった瞬間に距離を無効にする視線、ここでの全て理解した様なキャロル、サンタ帽姿の戸惑いと魅入られた様なテレーズが素晴らしい。赤と黄色の縦縞が入った帽子、少し襟を立てたベージュのコート、煙草…。どこを使ってもポスターになりそうなくらい全てのショットが格好いい。例の小物行商人がからむ場面でさえも。確かこの後、埃まみれの車窓越しに気怠いテレーズの横顔。旦那は当然ながら、キャロルの愛する娘や元カノで友人アビーの存在がなかなかに微妙…。狼狽えて電話したり、落ち着かず苛ついたり、家裁の席で生き方は変えられないと啖呵を切り面会権以外を譲歩し旦那に委ねる、写真の中でふと振り返る、キャロルの全てがイケメン過ぎる。ケイトブランシェット恐るべし。ただ、拳銃は弾が抜かれてて撃てない。そして、冒頭に戻って…再び交わる視線。原作はパトリシアハイスミス。他に「見知らぬ乗客」「太陽がいっぱい」「アメリカの友人」(どれも素晴らしい)など映画化作品も多いが、日常を侵蝕する不安を描く癖になる作家だ。
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