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ヘイトフル・エイトのdubstronicaのレビュー・感想・評価

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)
3.5
タランティーノ監督作を映画館で観られるだけでまず満足。ただし期待以上ではなかった。(後に期待の方向が間違っていた自分に気づく)

全5章のうち、はじめの2つ、ジョン・ルースとデイジー・ドメルグ、マーキス・ウォーレン、クリス・マニックスの駅馬車での章は流石に長く、そこで時間を食った分、後半の人物の見せ方が雑になってしまった感はある。ティム・ロスはどうしてもクリストフ・ヴァルツを思わずにはいられなかったし、ブルース・ダーンとデミアン・ビチルは見えづらかった。

ミニーの店に着いてからはジワジワと緊張感が増していったがサミュエル・L・ジャクソンの存在感が強すぎた。

ミステリー感はそこそこに銃をぶっ放しだすあたりからタランティーノのグルーヴがグイグイと出て来たし、話を別の角度から見せる見せ方もリズムを崩さずにお手のものだった。

ラスト付近のグッチャグチャな諸々、かなりなのでニガテな人も出そうなくらいやりまくってるし、大ヒットしてしまうとそれはそれで問題ありそうだが、やり切ってくれて良かった。

各シーン各シーンを、ここはレザボアが、ここはデス・プルーフが、ここはイングロリアス・バスターズが、と比べたくなってしまうファンとして野暮なところだが、まだまだ何回も観ることだろうから、もうすこし寝かせておきたい。

立川シネマシティの極爆試写会にて。

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運良く既に2回目を観ることが出来ましたが、これは断然2回目以降に花開くタイプの映画だと思う。
「ミステリー」という体裁をとってはいるものの、(第4章であっさりバラしている通り)「謎解き」なんかには対して興味なく、今回も裏切り者と信念(あるいは仁義)のお話しで、気持ちをそこにフォーカスして観る方が断然楽しい。
誰がウソをついている?よりも、コイツは何を信じている?の方をジワジワ浮かび上がらせる為にジョン・ルースを挟んでマーキスとクリスを対比させたかった(ゆえの長い馬車シーン)、とみると冷静沈着なマーキスはさておき、準主役のクリスの魅力が渋く覗いてくる。全員悪人的な雰囲気だが、リンカーンの手紙を信じとても丁重に扱うコワモテだが純情なジョン・ルースに通っている筋、黒人に対しては偏見タップリだがポジションによってコロコロと世渡りでき尊敬する父親や仲間と正義をバカ正直に信じるクリス・マニックス、こんなB級なキャラたちを真ん中に立たせて3時間も午後のロードショーのような何度もの鑑賞に耐えうる映画を飽きずに観続けたい人にとっての名作を作りたかったのなら、これは傑作だと思う。
子供になら若干のトラウマすら植え付けかねないシーンがいいかどうかは別として、そういう力のある映画だなぁ。
アカデミー賞を取るとかそういう仰々しい世界ではなく、二番館なりたまたまつけたテレビで何度もかかってついつい観てしまう「グラインドハウス」な映画として、ポップコーンかなにか食べながらもっとダラっと観続けたい。
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