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ヘイトフル・エイトのtsuraのレビュー・感想・評価

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)
3.7
クエンティン・タランティーノ監督は生粋の映画オタクで、もうそれはそれは凄いなといつも作品を見て思う。

そんな彼らしいエッセンスに富んだタランティーノ版 密室サスペンス。

色んな影響たっぷりの要素をひとつの作品によくここまでぶち込んだな笑

カートラッセルの「遊星からの物体X」なんかはまさにモロに影響受け過ぎてワロタ。

タランティーノ作品は常にキャストが豪華で毎回それが楽しい。
今回も上記のカートラッセル筆頭にお馴染みのサミュエル・L・ジャクソン、同じくタランティーノ組のマイケル・マドセン、ティム・ロス。

前作でもチョイ役で顔を出してた重鎮ブルース・ダーン!

でも何よりギャングの頭であったジェニファー・ジェイソン・リー、チャニング・テイタム(!)主要な8人はいずれも楽しんで演技してるのだろうなと伝わってくるくらい絶妙なハーモニーがたまらない。

本作で何より忘れてならないこだわりの部分は映画ファン必見だと思う。

映像と音楽が兎に角素晴らしいのだ。


こだわりの監督らしく70㎜フィルムで撮影し、レンズもクラシックな物を使用。

お陰で雪山の壮大さを広角で捉えておりこれがまた美しいのなんの。
それらを眺めて見るだけでも壮観さ伝わると思うし撮影監督のロバート・リチャードソンの自然と人物の描写でそれぞれが緻密に徹底されておりこれまた筆舌の映像に仕上がっている。
晴れた日の処刑シーンなんかは素人が撮ったら大事故になるような際どいシーンも、雪山の冷たさすら伝わる素晴らしい映像に仕上がってる。(雪山の寒空の下、相手を素っ裸の状態で殺そうとする件)

そして、何よりも御大エンニオ・モリコーネ!
この人に作曲しておもらえなんて!
もう彼の音楽を聴けるなんてどれだけありがたいこと!
古くはマカロニウエスタンから始まりソドムの市みたいなカルト作からレオーネ監督との終着ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ、そしてアンタッチャブルに何より忘れてならないニューシネマパラダイス!
これ程までに素晴らしいスコアを手掛けながらも現代の監督にも腕をふるう。
御高齢ながらその意欲には頭が下がる。
映画人としては最高の名誉だと思う事を本作では成し遂げている。
個人的にはアカデミー賞を受賞するより、彼を起用出来た事の方がある意味栄誉だと思う。

タランティーノは前作「ジャンゴ〜」の西部劇として完成度に納得出来ていなかった事が本作へと繋がっているみたいで脚本流出の憂き目にあいながらもファンからのリクエストに応え、スーパーヘビーな作品に仕上げてみせたところに凄みを感じる。
相変わらず好き嫌いはっきりするタイプは相変わらずで、説明の様な長回しの会話や無茶苦茶なバイオレンス(本作でも脳みそブチまけたり、体千切れたり、たっぷり吐血したり笑)
本題とは違う流れの描写や伏線の部分までやたらと、とにかく長い笑。

しかし、どの作品でもそうだが広げた風呂敷を見事集約させる怒涛の持って行き方は今作でも最高に気持ちよくてそれを見れる楽しさこそがタランティーノの作品なのだと思う。

個人的には前作の方がツボだったが…まあこの長尺を飽きもせず、簡単に人を殺しに殺しまくっても希望?的なエンディングまで用意しているし、映画のこだわりと完成度には満足の一本。
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