マンション

ヘイトフル・エイトのマンションのレビュー・感想・評価

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)
4.5
まずこの‘クセ者8人、全員嘘つき!’ていうコピー、誰が嘘ついてるかわからんていう密室サスペンスの醍醐味を全開でネタバレしてしまっているので、最悪である。

しかしこの作品、2回目以降の鑑賞で全員がウソついてることを前提に置いて観ると、個性溢れるウソプレイヤー達が多彩なスキルと多彩なスタイルでウソバトルロワイヤルを繰り広げる様がめちゃめちゃおもしろい。

特に推しなのはイギリス野郎のあいつ。レザボアドッグスでウソを守りきれずに死んでいったアイツが、今回はのっけから全開のウソで攻める攻める!その様痛快なこと!まるでレザボアドッグスでの無念を晴らそうとしてるようで、見てて応援したくなる。
ただし本人の思惑とは裏腹に、こいつが喋れば喋るほど胡散臭さ募ってくのがコメディ的にもめちゃおもしろい。

そしてタランティーノ過去作において常にべシャリの圧倒的強者であったサミュジャク親父。今回も登場からのリンカーンの件りで、ウソプレイヤーとしての底知れないポテンシャルを予感させられる。そして小屋に着いてからのサミュエルの目線のカットだけで、こいつゲーム支配してる感、がバッチリ伝わる演出。見事。サミュジャクとメヒコ野郎とのウソ相撲は一方的な横綱相撲で、とっくにウソ見抜かれてるのにサミュジャクに泳がされて下手なウソ言い続けてるメヒコ野郎がかわいい。VS北軍ジジイのバトルも超スリリング。これぞ会話劇!これぞ俺達のタランティーノ映画!ニ〇ーのホットの〇〇は勘弁してくれ!
第4章以降は会話劇以上に展開自体が凄まじい。これ以上は言えないが、この年公開された映画でも最もアガッた、血ゲロのシーン。基本、血ゲロ吐く映画は全部傑作と言えるだろう。

そして最終的なオチがまた巧いことに、リンカーンのくだりに帰結して、サミュジャクを通してタランティーノ監督自身の創作に掛ける矜持みたいなものが示されるのが感動的。画面上ではダンサーインザダークな終わりかたしてるのに。
人はしょうもない現実により嘘(創作)に魅せられるからこそ、生きていける部分もある。まさにこの映画を観てる瞬間のように。