映画を愛することは、映画の作り手を愛することでもある。
この映画はドハティ監督の怪獣に対する溢れんばかりの愛を堪能する作品だ。
この地上でドハティ監督以上に、キングギドラを、モスラを、ゴジラを神々しく撮れる監督がどれだけいるだろうか。
この映画の怪獣描写は圧巻の一言だ。
キングギドラが咆哮をあげる真下では人が千人単位で死んでいる。
そんなことはどうでもいい。
ただただ、怪獣の強さ、恐ろしさ、美しさが描ければいい。
そこまで突き抜けた人間が撮った映像だ。
この映画に対して「人間ドラマがお粗末」と言う評があるが、それは正確ではない。
渡辺謙が演じている「怪獣に人生を狂わされた男のドラマ」は実に見事にできているのに対し、ハリウッド映画にありがちな「離婚夫婦と子供が事件を通じて心を通い合わせるドラマ」は驚くほど平凡でつまらない。
ドハティ監督は「自分の好きなものは無茶苦茶うまく撮れるけれど、関心のないものは本当にどうでもいい映像しか撮れない」監督だということだ。
わかる。
だって、怪獣映画に人間ドラマなんていらないもん。
いらんいらん。
そういうレベルでドハティ監督に共感してしまうと、親子ドラマパートのダメダメ具合すら愛せるようになってしまう。あー、プロデューサーがねじ込んで譲らないから、いやいや撮ってるんだろーなー、みたいな。
何度見ても、この映画の怪獣描写は素晴らしい。
怪獣たちのあまりの神々しさに、彼らの戦いで、世界が滅びてしまっても構わないと思ってしまうほどだし、実際、キングオブモンスターの前に全ての怪獣がひれ伏した時は胸が震えた。地球の支配者が人類でなくなった瞬間なのに。
ため息すら出るほどの、怪獣美。
全ゴジラ映画の中でもマストの1本に加えたい。そんな傑作だ。
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「G-1.0」の感想
https://filmarks.com/movies/106496/reviews/185932211