らいち

奇跡の2000マイルのらいちのレビュー・感想・評価

奇跡の2000マイル(2013年製作の映画)
3.5
新作DVDレンタルにて。
1977年、オーストラリアの砂漠地帯を単独横断した女性を描いた物語。実話の映画化。

主人公の目的は砂漠踏破という挑戦にあらず。不毛の砂漠を美しいと感じ、その環境に身を投じることに強烈に惹かれている。それは、都会での暮らしに居場所を感じることができなかった主人公が、砂漠に自分の居場所を見出そうとする賭けでもある。常人には全く計り知れない世界だ。

旅のお供は、調教した4頭のラクダと、寝食を共にする一匹の愛犬だ。無表情なイメージしかなかったラクダの表情の豊かさに驚かされる。これほどラクダにフォーカスした映画を自分は知らないが、それでもラクダ萌えとはならず、主人公は愛をもって接するものの、あくまで家畜として描かれている。しかし、愛犬は別だ。本作を「私と犬」みたいなタイトルにも置き換えられそうなほど、主人公と愛犬の絆を描くことに多くが割かれる。主人公にとって愛犬は兄弟であり親友だ。冒頭の過去のフラッシュバックは愛犬から見た主人公の姿のようだ。かつて飼っていた愛犬との悲しい過去が、今も主人公のトラウマとなって胸を締め付ける。そして、待ち受ける悲劇が主人公をさらに追いつめていく。

砂漠には何もない。人もいなければ、動物もいない。ときたま遭遇するカンガルーは貴重な食料。道のりの多くは枯れて干上がったゴツゴツとした大地だ。美しい光景とは違う。空からは焼け付く日差しが照りつけ、熱風と砂塵とハエが主人公に絡みつく。朝起きて、積み荷をラクダに乗せて、30キロ歩いたら、積み荷を下ろして寝る、その反復の日々に主人公はついに嘆く。それは、超人ではない主人公の素直なリアクションだった。都会の喧噪を嫌って砂漠に飛び込んだ主人公に、雑誌社が資金提供の条件として派遣されたカメラマンが喧噪をもってくる。疎ましく思う反面、そのカメラマンの好意に救われる。そして、人に活かされる自分がいることに気づく。先住民アボリジニとの交流も印象深い。

主人公演じるのはミア・ワシコウスカ。多くの映画人から愛され、絵に描いたようなキャリアを継続する女優だ。白い彼女の肌がみるみるうちに焼けていく。ときに全裸、ときにパンツ一丁。過酷な状況に馴染んでいく彼女の反応が生々しい。素晴らしい熱演。
カメラマン演じるのはアダム・ドライヴァーだ。ドラマ「Girls」での変人イメージがどうしてもついて回るが、実はいろんな役柄に順応できる器用な人だ。それを実感する好演。今月公開のSWでの活躍に期待してます。

大きな起伏のない物語だが、過酷な自然と、出会う人間と動物たちに寄り添う主人公の姿に強く惹かれた。彼女がたどり着いた海の美しさが幻想的なほどで忘れがたい。

【65点】