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名もなき塀の中の王のmizunoのレビュー・感想・評価

名もなき塀の中の王(2013年製作の映画)
4.2
主人公ラブの荒くれぶりが尋常じゃない。
目が合えば吠え、声をかけられれば噛みつく、手のつけようがないあばれる君だ。
少年院から刑務所に移されたラブを待ち受けていたのは受刑者同志の派閥や腐った看守の罠。おまけに実の父親は同じムショ内にいる筋金入りの悪党ときてる。
そりゃグレるわ!


そんな中、ラブは一人の看守と出会う。とても根気強く彼と向き合ってくれる熱心な人だ。いい理解者を見つけラブは徐々に変わっていく…。
と、そうスムーズに話は進まない。長いこと暴力で覆われていた心はなかなかほぐれてはくれず、次々と問題も起きてしまう。
こういう生き方しか知らない人を変えることはできないのかもしれない…と諦めかけた時、ようやくうっすら光が見え始める。
はじめての友情、優しさに触れほんの少しづつ表情が柔らかくなる。その小さな変化を見つけたときの嬉しさと言ったら…!涙
「あんなに乱暴者だった子が…」と感慨深さもひとしおだった。
とりわけ、父親の保護者然とした立ち振舞いが効いてくる後半が良い。まるで説得力のないお説教も躾も、笑ってしまうほどに体当たり。
愛し方愛され方を知らない者同志がぶつかり合いながら親子になっていく。その様子には目頭が熱くなった。
ラブの更正は映画の中だけでは完結しない。でもそれはきっとそう遠くない先にある。
そんな風に思わせてくれる演出が、わたしはとても好きだった。


それにしてもジャック・オコンネルは光っていたなー!今にも爆発しそうな怒りのパワーが全身からみなぎっている!かと思えばときおり手負いの野良犬のように頼りない表情もチラリ。
う…かわいいなちくしょう。
ちょっと保護してしまいたくなった。
手に負えないだろうけど。
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