エディ・レッドメインの演技にただただ脱帽です。
イギリスを代表する理論物理学者であり最も有名な筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者の1人でもあるホーキンス博士。自由に伸縮できない指、神経さえも抜き取られたかのようなぶらりとした脚、病で歪む口元など、だんだんと身体がいうことをきかなくなる様子を細部に至るまで演じ切っていてアカデミー主演男優賞受賞も納得です。身体がほとんど動かなくなってからの目での感情表現もすごかった。
お話のほうは、ご存命の実在人物ゆえの配慮からか夫婦関係の心情変化、特に離婚前後からお互いの再婚に至るまではあっさりとした遠慮がちな描写に感じました。愛する人のため、そして自分自身の決断により選択した道とはいえ、介護で自分の時間が持てない生活は妻ジェーンの大きな負担だったと思うし介護疲れは想像をはるかに超えるレベルだったのではないかと思います。世界的頭脳を献身的に支える良き妻でい続けることの精神的重圧もかなりのものだったのではないでしょうか。そのあたりの描写がやや希薄と言うか綺麗にまとめた感じを受けましたが、あまりドロドロした修羅場な描写はできないでしょうし、そういった点を差し引いても、いい映画だと思います。
2人の時間を巻き戻して見せる逆回転の演出は、自分がジェーンになったかのように過去( 前半の描写 ) がフラッシュバックして胸がつまるような感じになりました。
『命ある限り希望はある』彼の言葉は強い説得力があります。やはり天才。
