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オデッセイのtsuraのレビュー・感想・評価

オデッセイ(2015年製作の映画)
4.1
リドリー・スコットという監督然り、スコセッシやスピルバーグ然り。
名匠達の創造や創作意欲は全く落ちないどころか人間に対する洞察力は更に磨きがかかっているし、創造という世界に限りはないんだろうなと感じた。
本作や「エイリアン・コヴェナント」を見てつくづく思った。
そして本当に多彩な表情を持ち合わせてる監督だなとも。

こんなにもユーモア溢れる作品を観るとついつい思ってしまう。

だってどんな世界でも齢を重ねていけば幾らか保守的な価値観や考えにどうしても陥り易い。

でもリドリー・スコットという監督は狂気じみたエイリアンを撮ったかと思えば、こんなにも笑って泣けて興奮するSFも撮れてしまうんだから、人間いつまでも見果てぬ物を追い続けないと萎びるのかな。

インターステラーじゃないけど、ディラン・トーマスの詩みたく
"Do not go gentle into that good night,

Old age should burn and rave at close of day,

Rage, rage against the dying of the light."

なんて言いたくもなってしまう。



この作品を劇場で見たときの事はよく覚えている。


何故ならワトニーという火星にひとりぼっちになった宇宙飛行士に、いつの間にか完全に感情移入しており、火星脱出へのクライマックスは彼が久々に人間の声(それも元クルー)と交信するときの抑えきれない感情から表れる感涙に私の頬も同時に濡れていた。

確かに涙は頬をつたっていた。


この作品の凄さはそもそも原作のこの現在に於いて架空の話をさも事実事象と捉えたようなリアリズムなのだが、それをマット・デイモンの大方自撮りで見せきってしまう。
その狂言の様な立ち回りで火星を右往左往する。
またそれが堪らなくありきたりなのに知ってる火星は全く知らない表情で私達に襲い掛かってくる。

そのアドベンチャーはよもやSFの域を超えている。

一つ誤ると単なるCSで良く放送されてる海外のサバイバル番組になろうチープ感をこの作品は地球との交信に合わせて難題を克服していく過程をドラマチック且つユーモアたっぷりに仕上げている。
そして、それが意図的であろうがなかろうが、この作品の舞台の様な火星の荒廃した赤土の世界にはなっておらず地球の様に緑豊かな?エネルギーに満ち溢れてまさしく主人公と共に体験し、サバイブして成長して生き残るストーリーになっている。

そしてそれを体現するマット・デイモン、改めていい役者だなと。

ジェシカ・チャスティンもやっぱりカッコいい。

でもっていいところ持ってくね、チャイルディッシュ・ガンビーノ。

インターステラーがノーラン祭りで持ち上げられているのは分かるけど、この作品もたまには見返してね。
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