OASIS

起終点駅 ターミナルのOASISのネタバレレビュー・内容・結末

起終点駅 ターミナル(2015年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

愛する女性の死をきっかけに釧路にやって来た弁護士・完治が、それから25年後、過去の事件と同様に罪を犯した女性・敦子の弁護を再び引き受けようとする姿を描いた北海道出身の直木賞作家・桜木紫乃原作小説の映画化。
監督は「深呼吸の必要」などの篠原哲雄。

佐藤浩市と本田翼共演のヒューマンドラマ。
本田翼の演技は本作で初めて観たが、演技の事など全く分からない素人目線からしてもその棒読み具合が酷いと思えるほどのクオリティだった。
佐藤浩市の台詞量と本田翼の台詞量とはその差が2倍近くはあろうかというくらいで、安定の演技で深みを感じさせる佐藤浩市に対し、長台詞になると観ているこちら側まで不安になってしまうような本田翼のぎこちない演技が、映画の内容とは関係無い部分で目に付き過ぎる為集中できないという事態が起きていた。

若き日の佐藤浩市と尾野真千子との出会いと別れを描く前半は、役者の顔面をこれでもかとどアップで映し、しかもモノクロ映像で尾野真千子がこちらに向かって語りかけてくるので、プレミアムモルツのCMを観ているかのようだった。
それから舞台は現代に移るが、本田翼が登場した辺りから露骨に映画がチャラ付き始める。
ヤク中の彼氏を探すキャバクラ嬢という設定で、完治の懐に入って来る速度が早過ぎる事や、若干の育ちの悪さと図々しさを感じさせる痛々しいほどの若さの表現としては無礼気味な言葉遣いもまぁ可愛げがあると思える。

ただ、どうしても演技面での話にはなってしまうが、彼女の割と重めな設定が本田翼が演じる事により全く重さが感じられないものになってしまっていた。
明るめな場面ではいつも同じような笑顔、深刻な場面ではこれまた同じように俯いた顔とバリエーションが無さ過ぎて声にも抑揚がなく常に平坦だった印象。
役柄の重さを受けきれるだけの魅力があったかと言えば、確かに可愛いが、ただ可愛さだけが前面に押し出されていて当たり前だが尾野真千子ほどの情感も深みも感じられなかった。

本田翼が押しかけ女房みたいな役柄だったなら、もっと佐藤浩市との関係性に微笑ましさを感じられたのだが、そうなると彼女のキャラクターからして更に鬱陶しくなってしまうので、佐藤浩市の方が料理が上手くそれに習う形になっているのは賢明な判断かと思われる。
佐藤浩市の主婦顔負けの家事力に感心した本田翼が彼をお父さんに向けるような視線で見つめている姿はやはり可愛いし、上目遣い等に父性を刺激されてしまう部分があった。

唐揚げもといザンギが非常に美味しそうでお腹が鳴ったし、冷やし中華やイクラ丼がまた旨そうに撮られていて食欲をそそる。
それを食べる本田翼のアップになるとやはり不安を感じずにはいられないが、イクラ丼を涙目でかきこむ佐藤浩市の演技には思わずグッと来てしまう映画だった。
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