スギノイチ

組織暴力のスギノイチのレビュー・感想・評価

組織暴力(1967年製作の映画)
3.5
警察を通すことで、観客がやくざ側へ感情移入することを許さず、「組織暴力」の冷酷さを描いていく。
この構造は傑作『県警対組織暴力』との相似も感じさせる。
やくざ映画の肝であるはずの抗争はカタルシスなど無く、巻き添えになった若い女の目が潰れてしまう。
上層部は責任を押し付け合い、威厳と権力を保つ事だけに全力を注いでいる。

終盤、末端の末端のチンピラに過ぎない千葉真一が社会の不正を暴くために躍り出るシーンはかなり熱い。
だが、その直後ボロクズの様に死んでしまう。
感情移入を拒んだように淡々と出来事を列挙していくのは佐藤純彌のやくざ映画特有のタッチだ。
決して感情移入させる技量が無いとかではない。多分。

ようやく悪を撲滅できるところまで行きながらも、さらなる権力によって阻止される。
その黒幕を演じるのが往年の剣劇スター・月形龍之介な辺りも上手い。
チンピラの死体や汚職相手が逮捕されている姿を尻目に、「私は失礼する」と、悪びれもせず警察陣の横を悠々と素通りする姿はカリスマさえ感じる。
明らかに黒幕であっても、「逮捕する法が無い」と無念の目で睨みつける丹波哲郎がテーマを際立たせる。

こんなに面白くシニカルで先進的な映画を撮っていた佐藤純彌監督。
70年代後半くらいからあのような「ご乱心映画」を連発したのにはきっと深いわけがあるはずだ。
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