ちんねん

FOUJITAのちんねんのレビュー・感想・評価

FOUJITA(2015年製作の映画)
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本作に関する小栗監督のインタビューより(風の旅人復刊6号)、
「外から世界を見るばかりだと、表現はどんどん単一になってしまい、世界が一元的になります。」
「当たり前のことですが、映画の画面には人物だけが映っているわけではありません。風景も事物も背景としてそこにあるのではなく、いっしょにある。その一緒の具合がどうなのか。」
とのべ、ヌーヴェルバーグに特徴的な言語をなぞるような映画に対して「内的な時間から組み立て直すこと」を本作では試みたという。

絵画的な描写、静的なカメラワークもさることながら、いわゆる大聖堂やら鐘の音、パリの鳥瞰のショットなどもなく、
あるブログでは「パリ感がなかった」と残念がる声もあったが、その「パリ感」なるものは本作でFOUJITAが聞き流した高村の詩、
中途半端なロマン主義をしか映し出さず、「内側から組み立て直」されたものではない。
私の目では本作でそれがどこまで実現されているのかを見極めることは難しいが、フランス(パリ)と日本という二国を舞台にしてそれを行う試みの成果の、
一部分であれ体感できたようには思える。それはやたらと物が置かれた日本の家屋、制作を行うFOUJITAの様子、物があまり置かれていないパリのホテルなどに典型的に現れていたが、
街の静的なショットにおいても、人々が生活したエリアばかりが映されるところにも見られる。

最後の夢のような描写から、戦後のキリスト教の洗礼を受けることになるFOUJITAの生を予兆する、ないし一挙に駆け上っていくような展開は、小栗監督なりのFOUJITA像の提示か。FOUJITAについてはあまり知らなかったが、一つの時代をかく生きることになった、一定のリアリティを持った中動態としてのFOUJITA像が私の中に出来上がったように思える。
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