おくの

セッションのおくののレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.6
ジャズは有名な楽曲や演奏家しか知らないし、楽器を弾ける訳でもないので確かな事は言えない。けれども、「ドラムは演奏に基盤となる色彩を与える」と誰かが言っていたのを聞いた事がある。

「偉大になりたい」と言う主人公アンドリュー

シェイファー音楽院に通う生活は、フレッチャー教授の誘いを受けて一変し、彼はジャズドラマーの高みへと這い上がっていく。

またそれに呼応する形で、彼の中に潜在的にあった人生や尊敬に対する周囲の人間との認識のズレや教授と教授が望むリズムのレベルを叩けない、高みに行けない自分に抱く煮え滾る怒りは、歪み狂い、血が滲み、身を削る猛打と葛藤の先にある偉業への深く狂熱的な渇望に転化する。

物語の終盤、観客がカメラにはっきり映るショットはフレッチャーにかまされ、意気消沈仕掛ける主人公が観客を一瞥する時の一瞬のみ。まるで観客の顔色など個々の想像程度でどうでもよく、演奏だけを見ろと言っているかの様。


数十秒後、アンドリューが精神的に醸成、境地に達する演奏を開始してから、その衝撃的なシーンに無駄は一切無く、加えて一曲目と異なり、舞台上の演奏を気持ちいい具合にカメラが舐め回し、アンドリューとフレッチャーの兼ね合いを深める。

そして、見事に化けた主人公のドラムは、洗練された衝撃となり、鮮やかな色彩を演奏に加えながら、それ自体更に頂上へと加速していく。舞台で何か神秘的な体験をしているかの様な表情。

終盤の終盤は、快感すら覚える一瞬。

全体的にも画面に眼が釘付けになる107分だった。

J・Kシモンズの優生人類みたいな見た目がフレッチャーに恐ろしくマッチしており、罵詈雑言の中でも「引っ込んでろミニ・ミー」には笑った。

マイルズ・テラーもラストの覚醒前に打ちのめされ、落胆しながら舞台の袖に向かい、眼を閉じたまま父親に抱擁された次の瞬間に、父親の肩越しで再び決意を秘めた鋭い眼を見せた時には凄みを感じた。

とにかくかなり臭く長く書きたくなるぐらい圧倒的な映画体験だった。