クロ

セッションのクロのネタバレレビュー・内容・結末

セッション(2014年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

監督がドラマーを目指していたころの挫折を基に描かれた映画とのことだが、単に厳しい指導を描いただけはなく、「理不尽が天才を生み出す」という話で、そこにはこの監督の「天才と呼ばれる存在」に対する思いが込められていると思う。

はたから見ると明らかにおかしい指導。でも、真の天才はその理不尽すら乗り越えるな。この監督は理不尽な指導に耐え切れなかっただけじゃなく、理不尽な指導を耐え抜いてみせてものすごい力をつけた人間も見てきたんだろうな。監督本人もJ.K.シモンズのような理不尽な指導を受け入れられていないのは分かるけど、心の底では本当の天才というのはその理不尽を乗り越えてこそ生まれるのだと思っている。それがこの映画のラスト。ジャズへの愛とかじゃなく、あんな指導常識的にありえないけど、でも天才はあーいうのを乗り越えるんだよなあ…という屈折した思いがこの映画の肝なんだと思う。

交通事故後、主人公はあの先生を訴えようとしない。訴えたのは親やほかの先生の強い勧めがあったからだ。その訴えようとしない描写も、挫折を味わった人間ならではの行動っぽくてすごくリアルだった。真のジャズドラマーを目指していたからこそ、理不尽に対する怒りより、それを乗り越えられなかった自分に対する悲しみのほうが勝ったのかなと思う。
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