Snow

セッションのSnowのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
5.0
狂気と情熱の狭間で生まれる葛藤を描いた珠玉の映画。音楽映画でありながら、スポーツ映画のような激しさとサイコスリラーのような緊張感を持つ異色の作品とも言える。

名門音楽学校シェイファー音楽院に通う若きドラマー、アンドリュー・ニーマン。彼の前に立ちはだかるのは伝説の指導者テレンス・フレッチャー。。彼の指導法は、怒号や罵詈雑言といった常軌を逸したものであるもののそれでもアンドリューは、自分の才能を証明するために必死に食らいついていく。精神的に肉体的に追い詰められていく姿は観ているこちらまで息苦しくなるほどの過酷さであっった。

最も印象的なシーンはやはり、ラストの演奏。コンサートの場でフレッチャーに意図的に嵌められたアンドリューであったが、彼はその屈辱に屈せず、自らの実力を証明するために“Caravan”を叩き始める。この場面の凄まじい緊張感とエネルギーは圧倒的で、ドラムソロがピークに達したとき、フレッチャーが静かにアンドリューを認めるような表情を浮かべる瞬間は鳥肌もの。格闘技のような師弟関係が、ここで一つの決着を迎えたように感じられた。(口が映されていなくて分からないが、ここでは恐らくフレッチャーにとって禁句だったはずのの言葉“Good Job”と言っている。)

『セッション』は、単なる音楽映画ではない。努力の意味、師弟関係の狂気、そして夢を追うことの代償を深く掘り下げた作品。何かに本気で打ち込んだことがない私だからこそ刺さった映画なのかもしれない。
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