Merciless

セッションのMercilessのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
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この映画の解釈はもちろん人によりけりだろうけど、自分は「スポ根物と見せかけた反スポ根映画」だと思ってます。スポ根にありがちな、どんなに酷いことをされてもそのおかげで最後は有終の美を飾れて、それまでの悪行が全て帳消しになって「先生ありがとう!」となるパターン、とは微妙に違うから。
なによりも指導が行き過ぎている。完全に狂気の域に達していて、たとえそれが凡人とは一線を画したスーパプレイヤを育てる為だとか、「芸術」のためだとかって大義名分があったとしても、決して許されない部類になっている。あれは指導者としてあまりに不器用すぎるんじゃないでしょうか。最後のなんて指導でもなんでもなくて、ただの意地悪だしなぁ。そもそもあそこまで他人に干渉されて表現するものが芸術になり得るの?内から溢れ出るものが歪んで表出しそうだけど。

体罰や精神的な苦痛を与えるのも指導の内であり、適度な負荷を与えることによって負けん気を奮起させ、結果的に能力を伸ばせる、という理屈は、あながち間違いではないと思うのですが、そうは言ってもリスキーなんですよね。この映画が素晴らしいと思えるのはあくまで結果論だし、不幸にもその指導方法がハマって飛躍的に伸びちゃう人がいるから良メソッドとして受け継がれちゃうんでしょうけど、ハマらなかったときの弊害が大き過ぎる。この映画も途中までまさにそれを具現化している感じで、まあ観ててしんどい、しんどい。

まあなんにしても、センセーショナルな映画であることは確かだと思います。
そして最後のセッションは、そこまでに至る非常に優れた演出も相まって本当に引き込まれます。音の力もさることながら、映像の切れ味がまた素晴らしい。短いカットを音楽に合わせてテンポ良く繋げたシーンが堪らなく格好良いんですよね。
音楽を真面目にやってる方からしたらきっと子供だましのようなシーンなんでしょうけど、素人の私は他愛もなく「すげー」と感じてエンドクレジットでは放心状態でした。

なんか、精神的な暴力で「素晴らしい映画を観た!」とマインドコントロールされているような不快感もあるものの、それを承知のうえで敢えて楽しめるのであれば、傑作と言っても差支えないのではないでしょうか。
Merciless

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