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セッションのsunyaのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
3.8
スパルタ教育が偉人を生むのだ!という体育会系ジャズムービー。

以下ネタバレ含みます。

学生時代に、ブラスバンドの全国コンクールで金賞を2度、銀賞を1度とったことがあります。その頃のエピソードが、本作のエピソードとよく似ていていろいろと思い出しました。

・1セントの音程の違いがわからないプレイヤーはステージに立つことなく掃除係で終わる。
・目をつぶって20秒をだまって数え、0.1秒以内の誤差におさめられない者はできるまで退場。
・譜面通りに演奏できないのは論外。(テンポ♩=60での♩12連符は悪夢だった)

このあたりの技術的指導はよくわかります。
よくわからなかったのは本作の鬼教師のような感情的な指導で、

・ミスがでると指揮棒、譜面台、チューナー、椅子、録音機器が飛んでくる。
・メンバーで競い合わせて、敗者には容赦ない罵倒と殴打が浴びせられる。
・やる気がないとみなされた場合、指導者が退場し、全員で教えを請いにいくまで戻ってこない。

などなど、理不尽でエモーショナルな指導が日々ありましたが、メンバーの半分くらいしか辞めませんでした。意地とプライドと目標を達成するためのモチベーションを持っていた者だけが残った感じです。

もし本作のようなスパルタ教育や感情的指導がまったくなかったらどうなっていたかと考えると「わからない」としか言いようがない。チャーリー・パーカーにシンバルを投げて喧嘩しなくても彼はバードになっていたかもしれないし、マイルス・デイヴィスにへたくそと言われなくてもジョン・コルトレーンはトイレで猛練習していたかもしれない。

ただ私が思うのは、他人ではなく「自分でつくった常識を超える壁」をのりこえようとするときに何かがうまれるというイメージがあります。その「常識の壁をのりこえようとする人の勇気」を全力でサポートするのがベストな指導者ではないかなと感じました。

余談ですが、ウイントン・マルサリスとバディ・リッチって方向性が真逆な感じがするのは私だけかなあ。
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