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セッションの555のレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.3
どうレビューしていいか言葉にできずでした。自分なりに整理がつかないというか、もっと何回も見てからにしたいというか。

映画を観ているだけにも関わらず、頭が痺れ胸が高鳴り呼吸が荒くなりどっと疲れます。時々、世界観に入りすぎて本当にくたくたになる作品ありますよね。

名門音楽院でドラムを専攻する19歳の若き演奏家、ニーマン。
練習熱心だけどどこか自信なさげな彼は、ある日居残り練習をしているところに現れた学内一のバンドの教官であるフレッチャーに声をかけられます。

「倍のテンポでスイングを叩いてみろ」と注文され、ニーマンは必至にリクエストに答えようとしますが見切りをつけたようにフレッチャーは立ち去ります。
しかしその後、フレッチャーのバンドに入団することができました。が、ここからが鬼教官との地獄の日々の始まりで・・・。

まずこのニーマンとフレッチャー、正直どちらも謎めいているというか、掴み所のないように私は感じます。
それもこの映画を通して自分なりにキャラクターを解釈していく楽しみもあります。

フレッチャーの恐ろしさは本当にオシッコちびるレベルですね。
飴と鞭がすごいんだ本当。
人格を否定する言葉を浴びせ、ひたすら、できるまで演奏させる。でも彼は音楽の天才を生み出したい、その領域まで連れて行くために指導しているんだとわかります。
ただ、その「指導」がどこまで意図しているかはわかりません。ラストのコンサートでニーマンにしたことは、導くという彼の業を奪ったニーマンへの復讐だったんじゃないかな。そのあとのニーマンの復活まで読んでいたのでしょうか。ここで這い上がってこなければそれまでだということだったのは間違いないと思いますが。
私が好きなのは「感情で叩け」とか言わないところです。ひたすらテンポがあっていない、遅い、早いを繰り返すだけ。
その必至さの先に感情が伴った素晴らしいパフォーマンスがあると思っているのかなぁと想像しました。

さて、ニーマン。文字通り血が滲む努力を続ける才能を持っています。彼のことは色々考えすぎてなかなか文字に起こせません。
ラストの息飲む演奏で、一度音が消え、その後の彼の様子が神々しい。
無駄のない、コンパクトな作りで地獄と天国を見せてくれる傑作だと思います。
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