むく

セッションのむくのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
1.5
音楽って良いものですよね。ジャズも素敵です。映画も良いものです。
でもこの映画には、音楽の良さも、映画の良さも、どちらもありませんでした。

本当に残念なのは、この映画を製作した人の意図というか、根底の部分から「音楽は良いものだ」というテーマを感じられなかったこと。鬼教官が、練習室で一言「俺に恥をかかせるなよ!」って生徒達に言い放ちながら指導するシーンがある。このセリフで、急速に萎えました。事あるごとに暴言吐いたり、椅子投げたり、ビンタしたりするのは、パワハラだし認めたくはないけど、100歩譲って「素晴らしい音楽を生み出す為」という思いからであればよかった。でも、教官にとってそれは単なる口実。先のその一言が、本音。音楽というものが、映画の中では人間同士のいざこざの理由としてのテーマでしかないと確固たる表現をした決定的瞬間。音楽に対する尊敬の念が無いのが、この鬼教官を通して伝わってきて、虚しかった。音楽の価値を示されていないのに、音楽をテーマにして対決されてもね。価値のないもので対決しているのを見てても、面白くない。

主人公はドラムの主奏者を狙いつつ、途中でとある女性に恋し、勝手に好きになり、でもドラムが大事すぎて一方的に別れを告げ、そして「なんか人恋しくなったな〜」って思い復縁を願うが叶わず...。この展開、必要?なにこのどうしようもないテンポの悪さ。音楽はテンポが大事だけど、映画もテンポが大事だよ。皮肉だ。この監督、鬼教官を見習ってテンポを大事にして映画作れば良かったのに。

スタンリーキューブリック監督の映画「フルメタルジャケット」に登場するハートマン軍曹並みに口が悪い、鬼教官のフレッチャー。おまけに性格も心底悪い。この鬼教官にとって音楽は、名声と復讐のためのツールになっていた。主人公のアンドリューも、自我が強く思いやりに欠け、主人公にとっての音楽は、自己顕示欲を満たすためのもの。結局2人とも同じ穴のムジナ。そのどうしようもない2人の喧嘩を延々と見せられて、ポカーンでした。最後のジャズフェスティバルを見に来た観客と同じ。拍手喝采もなく、ただ唖然。
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