2ヶ月遅れのクリスマスプレゼントとして贈られてきたこの英語版ディスク。ジャケットを見た瞬間「ヘビーでシリアスなのに低クオリティー」な予感がして放置。送り主から「もう観たか」と何度も聞かれしぶしぶ再生。
予想を裏切り、まずクオリティーの高い美しい映像に目を奪われた。何より楽器が美しい。これほど楽器が輝き眩い映画を見た事が無い。音楽が良いのは言うまでもない。
突然現れる教師。その人物像を次第に明らかにしていくが、最後まで出し切らない所がこの映画のミソであり監督の巧さの1つ。
こんな常軌を逸した指導をする教師が、個を尊重するアメリカに実際いるだろうか。映画の世界だけだろうか。今はどうか知らないが日本にはいくらでもいたこんな教師。そんな事を考えずには観られない。
しかし、この映画の教師は日本によくいたヒステリック暴力教師とは訳が違う。崇高な目的の為に生徒を否定する。肯定することさえ否定する。
主人公は追い込まれ、自ら追い込んでいく。そして2度「爆発」するのだが、その2度の爆発の「仕方」と「理由」の違いが非常に味わい深い。
2度目の「爆発」であるラストシーンで、追い込み追い込まれた2人が神がかり、その先に見える神秘。
音楽を通して2人が分かち合ったり許し合ったりなど、ありがちな人間ドラマは一切ないのである。そんな人間的なことを超越した世界を2人は見るのである。
2人だけというのがミソなのである。だから、ありがちな拍手喝采スタンディングオベーションで締めくくらないところがまた憎い。「ここで終わるか!」とその瞬間は思った。しかしすぐに理解出来た。他人の評価などどうでも良い世界を見たのだ。
なんとも憎い。よく出来た憎たらしい映画だ。