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セッションのsanchangのネタバレレビュー・内容・結末

セッション(2014年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

今年1番楽しみな作品を人生初の試写会で観てきました。結論から言うとめちゃくちゃよかったのでみんな観に行ってほしいけど10人いたら5人くらいは大嫌いな映画になる。
この先はネタバレしてるのでこれからご覧になる人は読まないでください。

パワハラの連続なのでとにかくしんどい映画だが、それを我慢すると大きな大きなご褒美がある映画。少なくとも僕にとってはそうだった大きなカタルシス。

名門音大のジャスバンド。バンドメンバーになったドラムのマイルズテラー君が、指揮者であるJKシモンズに行き過ぎた指導を受ける話。

JKシモンズのバンドメンバーに対する厳しさを表出する時の主語は全部自分で、「私のバンドをぶち壊すな」というセリフが何度もでてくる。そしてそこで見せる屈折したプロ意識は狂気であり、それを演じきったJKシモンズはオスカーに値するし、マイルズテラーが壊れていく様子のリアルさも恐ろしい。
結果的にマイルズテラーのプロ意識にも狂気が生まれる。2人のプロ意識は大きな衝突を生み、事故を誘発し、2人とも音楽家としてのキャリアを棒に振ることになる。
ここまではとにかく最悪なシーンの連続。けれど最後の最後だけ、マイルズテラーくんのシモンズに対する挑戦的な行為を経て(あれだけパワハラされたのにまだまだ打ち合いを挑むテラーくんの強さにも感動!)2人は屈折したプロ意識同士で本当に少しだけつながることになる。この場面でのカタルシスは並みの映画ではなかなか味わえないもので、最高潮のまま映画はエンドロールを迎える。

過剰な負けん気の強さやプロ意識が外側に向いたとき、パワハラを引き起こす可能性があるが、それがプロ同士の場合はどんなにも狂っていても成り立つ可能性はあると思う。だから「ブラック企業反対」「パワハラ反対」的な立場でこの映画を解釈すべきでない。圧力に屈しない強さと、困難を乗り越えようとする強い意志及び行動力が、理不尽な暴力に抗う手段である。劇中ではマイルズテラーだってやな奴だけど、意志の強さの大切さを、この映画の中に見出した。
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