【第67回カンヌ映画祭 コンペティション部門出品】
『メゾン ある娼館の記憶』ベルトラン・ボネロ監督作品。20世紀を代表するファッションデザイナーであるイヴ・サン・ローランの半生を描いた作品。カンヌ映画祭コンペに出品、アカデミー外国語映画賞フランス代表にも選出された。
まあまあよかった。サンローランと同性の恋人との関係を軸にファッション業界を捉えたプロダクションが優れている。当時を再現した美術、衣装が作品に華を添えている。
サンローラン役のギャスパー・ウリエル、愛人ジャック役のルイ・ガレルをはじめ繊細な演技がみられる。ジェレミー・レニエ、レア・セドゥ、ジャスミン・トリンカといった脇に至るまで豪華で眼福だった。
物語としては過去と現在をシャッフルしたような構成は少し散漫に感じられた。今どの時点の話なんだっけ?というのが分からなくなる瞬間もあったのが残念。また、ファッションと愛人を並列的に描いているが故に分かりにくい映画になってしまっている。軸がブレているような印象。
しかし全体としては言われているほど悪くはない出来だと思う。しっかりしたストーリーテリングと豊かな色彩表現が美しい。役者の演技も適度でよかったと思う。
ファッション業界に造詣はないしあまり興味がない自分としては、あるアーティストの一時代を垣間見るという意味で意義深い作品だったように思う。