バッガ2000

アバター:ウェイ・オブ・ウォーターのバッガ2000のレビュー・感想・評価

4.2
キャメロン版「七人の侍」。アバターシリーズに自分がやりたかったファンタジーやミリタリーのスペクタクルら家族や民族、戦争のテーマだの、あらゆる意味で集大成のライフワークにしてゆかんとする意気込みが伝わる。

1分当たり2,3億は掛かっている。日本でそこそこの邦画が200本近く撮れる規模。それだけ誇大されて提示された最新鋭のものを190分見せられて、もちろん「何も感じなかった」とは言えない、魔術的な体験ができた。あのヌルヌルとしたCGの世界が実在しないこと、終わってからふと我に帰る。何がファスト映画だ、これを見ろドーン!!って感じ。

ただ、ストーリーの面では、手放しで入り込めない。七人の侍は「とんかつにカレーかけてうなぎ乗せて食べる」ような映画であると言ったと囁かれているが、この映画は映像のバイキングを食べているみたいだった。かなりレベルの高い食べ物を満遍なく皿に盛り付けて、一部にはパサついて盛り付けて後悔したものもあるが、基本は糖質まみれで大満足、こんな贅沢な日があってもいいよねで終わったはいいものの、口の中は濃い味が後に引き、腹は膨れすぎてもはや気持ち悪くすらある、という食後みたいな感情になった。あれ、美味しいご飯ってなんだっけ?と感覚が麻痺してきて、ふと我に帰る瞬間があるが、まあ美味しかったで終わることができるが、全体の皿の盛り付けやら、味の文脈やらを思い返してみた時に、どうも粗があった気もしなくはないが、まあ幸せだったね、で済む。
具体的には終盤のタイタニック的な展開で民族の戦争ドラマは等閑になって、それなりの尺で別のテーマである自然との対峙を、薄味の人間ドラマで展開させてしまっていたし、父として家族守ること!なんて共和党みたいな主張を高らかに宣言されてもなあ、キャメロンのこういうとこ陳腐だなあと追わざるを得ない。水の民族のも、水を見せたいがために後付け的な理由で結びついている感じもあるし、クジラとの交流やパノラマを見せつけるシーンが多すぎて、重大なテーマがどれも見せ物になって上手く感情が乗らない。