天パのT

アバター:ウェイ・オブ・ウォーターの天パのTのレビュー・感想・評価

2.0
すみません、好きな方には申し訳ないのですが自分的にはダメでした…。

奪われるのは目か、心か。
いいえ、時間です。

【アバター、13年ぶりの続編】
2009年に映画史を塗り替えた『アバター』から13年。続きものだという話は当時からあったが、かなり時間を空けての公開だ。
アバターの話をすると必ず出てくるのは"映像"の話。赤と青のフィルムのメガネをかけて見る3Dではなく、今の3D映画の形式になってすぐぐらいの作品で、色んな会社が3D映画を作るのに躍起になっていたが、アバターが明らかに他を圧倒していた。

【はっきり言いますが、今作は嫌いです】
今作の感想を言う上で、前提をハッキリさせとかねばならない。確かに今回はメインの舞台が海になって映像の美しさが更に強靭なものになっていたし、技術の進歩もあって当時の記憶より3D表現やCGの質は更にアップしていた。だが、映像だけで「良い映画だった!」というのはもう無理な話だ。だって当時からそれは既に凄かったんだから。
それに、1作目について「凄いのは映像だけで、話はよくあるナウシカものだ」と揶揄する声もよく聞くが、それでも主人公のジェイクが圧倒的ヒーロー感をもって上り詰めていく様にはワクワクしたものだ。
だが、今作については、映像の美しさはあれど、話としてのワクワク感が自分には全く沸いてこなかった。そりゃあ、映像に圧倒されるという意味でのワクワクが無かったわけではない。IMAX環境で観たこともあり、映像の美しさを楽しむという価値のある類ではあった。それは間違いない。
とはいえ、1作目に比べて圧倒的に話運びや迫力がスケールダウンしている。設定も上手くいっていないところが多な感じた。正直、自分は本作については思いっきりNo!である。もはや、嫌いだ。

【とりあえず良いところは…】
海の表現。キャラクターが可愛い。特にキリちゃんと末っ子ちゃん。あと海族の娘(ちょっとあからさまに色っぽく描きすぎだけど)。以上。
でも、可愛いんだけど、これといって見せ場もないんだよね…。キリちゃんに関しては、結構直接的に可哀想な場面があるし、それについて特に今作中で回収されるわけではないのでただただモヤモヤする。

【そもそも今回の設定にノれない】
本作では急にジェイクの小物感が酷く、キャラクターは増えたけどもヒーローが不在である。ネイティリもこれといって大きな活躍をしない。別に『アバター』はヒーローものじゃないんだろうけど、前作のカタルシスは個人的にそこにあったので興醒めである。メインの舞台の海に行くまでも小一時間かけているが、それにしても主人公の判断が安直すぎる。言わんこっちゃない、観客が心配した通りの展開にしかならない。そのくせ、上映時間は長いくせに、もといた森の部族が襲撃を受けて困ってしまうとか、そういうオマティカヤ族全無視の感じも違和感しかない。
また、敵の出自と動機もいただけない。前作もファンタジーなのは間違いないが、それでも色んな設定を許容できた。しかし今回は、敵の出自については急にファンタジー感が強すぎて、冒頭から「え…ナニコレ」という。個人的には『スカイウォーカーの夜明け』のパルパティーンよりズコーーッ感が強いぞ。動機についても、一応地球人の大義名分もあるんだよ感は申し訳程度に説明されていたけど、1作目と比べて個人的な感情で動きすぎ。そう言う意味でも、話として大きくスケールダウンしている。映像的なスケールダウンでいえば、今回も戦闘シーンが見所なのだろうが、前作の方が圧倒的に規模がデカかったでしょ。
あと、設定でいえば、なんで違う部族同士がゴリゴリに英語でばっか会話してるんだよ!!ここぞという時にしかナヴィ語が出なくなって、あれ、そんな稀少な言葉だっけ?と。ジェイクもわざわざ「いまやネイティブ」って言わせてただろ。そういう民族感もスケールダウンしていないかい。

【これ、そもそもシリーズとしてどうなの?】
前作については、当時から続編構想があったとはいえ1作品として一応まとまっていた。片や、今回は急に続きもの感:展開を先延ばしにしてる感が強い。そんなこと言ったらスターウォーズやMCUはどうなるの、と思うかもしれないが、いやあれは作品と作品の間隔は極端に離れていなかったから。
2作目以降は計画的に公開されるらしいが、結局のところ1作目から2作目の時間を空けすぎたせいで、主人公のまわりの環境が変わりすぎている。なのに3作目以降はおそらく2作目と時系列が極端に離れることはないだろう。その乱れたペースで、果たして面白いシリーズとして成立させられるのか…?
更に、これも1作目から時間を置きすぎたせいだと思うが、特に序盤は1作目と同じようなくだりがキャラクターを変えて繰り返されている。『アバター』に心を戻って来させるための気遣いが、鈍重感に繋がっている印象だ。

【最後に…実は映像にも言いたいことが】
冒頭で書いたように、映像が綺麗なのは大前提なんだけど、綺麗か否かじゃないところが最初のシーンからすごく気になった。そのノイズは最後まで続いたのだが、それは、3D表現(奥行き表現)が凄すぎるせいなのか、フォーカスの当たっているキャラクターが映像全体から浮きすぎていて(飛び出しているということではない)、ずっとゲームの映像を見せられている気分だった。だからか、CGの質は上がっているんだろうけども、風景に溶け込んでいないように見えて、前作よりも寧ろCG感が増してしまっていた気がする。

…とまぁ、1作目は大好きだったけど、今作は少なくとも自分にはダメでした。色んな部分で。
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