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殺人者のmatchypotterのレビュー・感想・評価

殺人者(2013年製作の映画)
3.3
勢いでこれを選び、なんかちょっとスゴい話だな、と面食らって調べたら実話ベース。
韓国の実話ベースのえぐり具合は相変わらずなかなかスゴい。

スゴいんだけど、“スゴいことの後日談”的な部分を描いてる。

だから、この主演だし、もっとハードでエグい猟奇的な映画かと覚悟して観たら、そこは回想的にフラッシュバックはするものの少し心理的なサスペンスというか、“殺人犯”の抗えぬ衝動や葛藤、異常な心理面が強め。

その“殺人者”、主人公がマブリー、マドンソク。
もう、何があったか描かれなかったとしても、明らかに何かが欠けてしまっていて、何かを隠して何かを背負ってることが明らかな男。

このマブリーの見た目と出立ち、言動だけでこの作品、この一連の事件、彼が“異常”であることが明確に伝わってくる。

完全に“ヤバい”男、何かに取り憑かれてしまってるような、その呪縛から抜け出せないような。
抗うことが別の衝動に繋がってしまう異常な精神。

それが彼が演じることで一発で伝わってくる圧倒的な存在感。

しかし、その異常な精神も、それを楽しんでいるわけではなく、罪の意識があって、逃れてきて、それでも逃れられないと思う精神が自らを蝕む。

そして、この男には息子がいる。
その息子はいじめられているが、転校してきた女の子と心を通じ合わせ始める。しかし、彼女は彼女でなにやらワケアリの過去がある。

友達になったかと思った矢先、まさかのその転校生の女の子の過去と彼の父、つまりマブリーが繋がる。恐るべき繋がり。

この出会いの巡り合わせが、数年間潜ませていた色んな衝動、葛藤、を呼び醒まし、再び静かなる狂気の沙汰を巻き起こす。

なんつー話か。
マブリーの“過去”が少し情報不足なのと、何なら“空白の6年間”が謎なので、そこをもう少し補完してくれた方が“再び”感があって繋がる瞬間の納得性が増したかもしれない。

しかし、当のマブリーだけが、、、かと思ったらそうでもない。
「“血”は争えない」。
そこも“寝た子が起きる”展開になるのか。それに関しては予想だにしなかった展開。

ネグレクトを受けた子供が親になるとネグレクトしやすいみたいのをどこかで読んだ気がするが、“殺人者”、それもまさか、、、。
という、なかなかどこに救いを求めれば良いかわからない話。

もはや、ハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか、それすら判断しかねるラスト。
さすが韓国の映画。いくら実話ベースと言えど、その辺の描き方はえげつない。

“連続殺人犯”の心理など到底理解できないし、それがどんなであろうと罪は罪でしかないがないが、その境地はやはり常軌を逸している、それは確実に感じ取れる作品。


F:2007
M:692
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